あなたの・・・
「アンジェリーク!」
夜遅くにアンジェリークのもとに尋ねてきたのは風の守護聖ランディだった。
走って来たのか、息が弾んでいる。
「ランディ様!」
「これをさ、君に渡したくって・・・」
ランディは小脇に抱えていた包みをアンジェリークに手渡した。
「これは?」
「君へのプレゼントなんだ。
今日はオリヴィエ様と一緒だったんで、オリヴィエ様に選んでもらったんだ。
───気に入ってくれるといいんだけど・・・」
「そんな・・・ありがとうございます!」
お礼を言うアンジェリークを嬉しそうに見て、ランディは「おやすみ」と言って夜道に姿を消した。
ランディの姿が見えなくなるまで見送ったアンジェリークは部屋に入り、もらったプレゼントの包みを解く。
中から出てきたのは、可愛らしいドレスだった。
「ランディ様・・・」
このところ、ランディは何かと忙しそうにしていた。
女王試験が行われている最中に新しい惑星が出現したので、その惑星の探査や、他の惑星の祭礼に出席と。
試験に支障をきたさないよう、それは土の曜日や日の曜日に集中していた。
帰ってきても通常の執務に加えて、探査や祭礼などへ行った残務整理があり、
中々アンジェリークとゆっくり過ごす時間は取れない。
だからこうやって、夜遅くに走ってきてはアンジェリークに会いに、そしてプレゼントを渡しに来るのだった。
プレゼントをもらうのはとても嬉しい。
だけど、プレゼント以上に嬉しいのはランディの顔が見れること。
執務室に行けば、ランディには会える。
だが、それも限られたごくわずかな時間。
今は仕方がないとアンジェリークもあきらめてはいた。
気持ちを切り替えて、今もらったドレスを身体にあててみる。
オリヴィエが選んだというだけあって、アンジェリークにとても似合っていた。
「これを着て・・・」
ランディ様と一緒に過ごせたら、どれだけ嬉しいだろう。
来たる日に期待を込めて、アンジェリークは眠りについた。
土の曜日の午後、アンジェリークはランディに呼び止められた。
「アンジェリーク!」
「ランディ様!」
正装のままでいるということは、今、帰ってきたところなのだろう。
今日もランディは別の惑星に行っていると聞いていた。
「あの・・・さ、明日、時間取れるかな?」
「え・・・?」
「ほら、このところ俺忙しかっただろ?
君と一緒に過ごせなくって──────」
「・・・ランディ様」
「あ、もちろんアンジェリークさえ良ければ・・・の話なんだけど・・・」
「でも、ランディ様・・・お疲れじゃ・・・」
「いや、全然! 君と一緒に過ごしたいんだ!」
アンジェリークは嬉しかった。
「本当は今日って言いたいところなんだけど、今から残務整理があってさ・・・」
「嬉しいです、ランディ様!」
「良かった! 俺断られるのかと思ったよ!」
ホッとしたような顔を見せて、ランディは聖殿へと向かって走っていった。
───明日は、ランディ様にプレゼントしていただいたドレスを着ていこう!
久しぶりにランディと一緒に過ごせると、自分の部屋に戻るアンジェリークの足取りは軽かった。
日の曜日。
ランディの私邸には可愛いドレスを着たアンジェリークの姿があった。
「やあ! 良くきてくれたね!」
「こんにちは、ランディ様!」
ランディは眩しそうにアンジェリークを眺めた。
「良く似合うよ、アンジェリーク」
「ありがとうございます」
「それで、昨日俺急いでたから渡しそびれたんだけど───」
アンジェリークをソファに座らせ、ランディは小さな包みを渡した。
「そのドレスに合うかなと思ってネックレスを買ってきたんだ───
・・・俺、女の子の物って買うのに慣れてなくって・・・・」
「そんな・・・」
「アンジェリーク、どうしたんだい?
俺からのプレゼント・・・嬉しくなかった?」
遠慮がちに目をふせるアンジェリークにランディは尋ねた。
「いえ、嬉しいです・・・
嬉しいんですけれど───こんなに頂いて・・・私・・・」
困ったような顔をしてアンジェリークが口を開く。
「あのさ・・・俺・・・正直言って女の子って・・どう接していいのかわからないんだ。
だけど、アンジェリークには笑っていてほしい。
このところ俺たちずっとゆっくり過ごせなかっただろ?
───せめてものお詫びの気持ちなんだ」
「ランディ様」
アンジェリークはランディの言葉に微笑んだ。
「違うんです。
私・・・プレゼントもとても嬉しいんです。
ですけど、ランディ様と一緒にいるだけでいいんです・・・」
そう。
それはアンジェリークの素直な気持ち。
ランディと一緒に過ごせる時間以外、何もいらない。
もちろんプレゼントをもらうのはとても嬉しい。
だけど可愛いドレスをもらっても、ネックレスをもらっても、ランディがいなくては何の意味もない。
そこにランディがいなければ───
「俺だって・・・
アンジェリークと一緒にいるだけで───」
「ランディ様・・・」
「あ・・・あの・・・」
「?」
「俺達、こうやって会えたのって・・・運命だと思うんだ。
君と出会えて、君に会えて・・・
俺───何て言っていいのかよくわからないけど、すごく嬉しいんだ。
こうやって、今・・・君と話している時間も───
・・・・君が好きなんだ」
ランディの手がそっとアンジェリークの手を取った。
世界中で誰よりも何よりも大切な人。
「アンジェリーク・・・」
「ランディ様───」
「俺達・・・ずっと一緒にいられるかな?」
「ええ・・・きっと───」
ランディの顔がアンジェリークに重なる。
ずっと。
ずっとそばにいて──────
ずっと。
ずっとそばにいたい──────
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