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COFFEE BREAK 2


 

優しく澄んだ瞳。
屈託のない笑顔。
そんな顔ばかりがアンジェリークの瞼に刻み込まれている。
その瞳で私を・・・私だけを見つめてほしい。
その笑顔で私を・・・私だけに笑いかけてほしい。
ベットの上に座り、大きな枕を抱きかかえ、アンジェリークは何度となくため息をついていた。
幾度となく繰り返した自問自答。
ふと目をあげると、テーブルの上には民の望みの予測が置いてある。
聖殿に育成のお願いをしに行かなくなってどのくらいの日にちが経つのだろう。
幾度となく繰り返した自問自答。
───このままじゃだめ、ちゃんと育成しなきゃ。
・・・うん。
───みんなが心配しているよ。
・・・うん、わかっている。
───女王試験は遊びじゃないのよ。
・・・ええ。
そう、このままエリューシオンを放って置くと成長が止まるどころか、荒廃してしまう。
誰に言われなくても、それはアンジェリーク自身が一番良くわかっていた。
「──────」
しばらく考え込んでいたアンジェリークだが、やがて意を決したような顔で立ち上がった。
あの小屋に行き、あの男性がいるかどうかはわからなかったが、とにかく行くだけ行ってみよう。
そして───あの人に、私の気持ちを伝えよう・・・
もうすぐ夕食の時間だったが、そう決心するといてもたってもいられず、
アンジェリークは寮を飛び出した。

小屋が近づくにつれ、心臓が早鐘のように鳴っている。
大きく深呼吸をし、そしてアンジェリークは小屋の扉付近で立ち止まった。
人の気配があり、中から楽しげな声が聞こえてくる。
「カティスったら・・・」
「───ディア」
声の主はまぎれもなくあの男性と女王補佐官のディアであった。
こっそり窓から中を覗くアンジェリーク。
小屋の中には楽しそうに語り合うディアとあの男性がいた。
二人の互いを見つめる視線には、互いに特別な感情を持っていることも、
二人はアンジェリークの知らない時間を過ごしていたということも。
そして、それは誰にも立ち入ることのできない時間であったということも。
全てを理解したアンジェリークは、音を立てないようにそっと小屋を離れた。
不思議と涙はなかった。
ショックが大きいのか、それとも何となく悲しい予感があったのか。
とにかくアンジェリークにできることは、小屋から早く離れることだけだった。
辺りは薄暗く、ぼんやりと歩いていたアンジェリークは目前に立っている人物を見て、
立ち止まった。
「・・・アンジェリーク」
低く、呟くような・・・そして優しい声。
「クラヴィス・・・様」
「──────」
クラヴィスは無言でアンジェリークに手を差し出した。
「え・・・?」
「少し・・・お前と話がしたい」
今は誰とも話をしたくないような、それでいて全てを誰かに聞いてほしいような、
そんな気持ちがせめぎあっている。
しばらくためらった後、アンジェリークはクラヴィスの手に自分の手を重ねた。
安らぎを司る闇の守護聖クラヴィス。
彼の持つサクリアのせいかどうかは分からないが、アンジェリークの乱れていた気持ちは
少しずつ落ち着きを取り戻していた。
同時にクラヴィスもアンジェリークから何ともいえない安らぎを感じていた。
手をつなぎ、黙ったまま二人は公園へと歩く。
噴水の水の音だけが静かに聞こえ、空には星が輝き始めていた。
「私───」
口を開いたアンジェリークの声を背中で聞いているクラヴィス。
「失恋しちゃったんです」
「そうか・・・」
かつて自分が味わったあの気持ち。
できればアンジェリークには味わわせたくなかったあの気持ち。
「馬鹿ですよね、エリューシオンの育成もほったらかしにして・・・」
アンジェリークの声がだんだん涙声になっていく。
「でも・・・でも、好きだった・・んです・・・」
「──────」
何も言わずクラヴィスはアンジェリークを優しく包み込んだ。
「ごめ・・・んなさい。
 ───私・・・クラヴィス様に・・・甘え・・・ちゃって・・」
気の済むまで泣けばいい───
微かに聞こえたクラヴィスの声が起爆剤になったかのように、声をあげてアンジェリークは泣いた。
やがて泣き疲れたのか、アンジェリークは眠ってしまったようであった。
クラヴィスはアンジェリークの体を抱きかかえ、美しい金の髪を優しく撫でる。

───私の胸に秘めるお前への想いなど、お前は気づかぬであろう。
ゆっくり眠るがいい。
お前の目が覚めるまで、私はお前の側にいよう。
お前の気持ちが少しでも安らぐように───

いつかは女王としてこの宇宙を治めるかもしれない少女。
自分の手には届かないであろう金の髪の天使。
切なそうな顔でクラヴィスはアンジェークの額にそっと唇をあて、
夜空に輝く星空を見上げた。

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