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初めての・・・




     「うっわぁ〜!!!
     「 ごっつ綺麗やなぁ〜!!! ホンマ別嬪さんや!」
     「「チャーリーさんったら・・・」
     チャーリーの言葉にぽっと頬を染めるアンジェリーク。
     栗色の髪をアップにし、薄く化粧をし、カクテルドレスに身を包んだ彼女は、いつもの彼女より大人びて見えた。
     「そんなことないで! めっちゃ綺麗や!!」
     そういうチャーリーもタキシードを着て、めかし込んでいる。
     ───これでこそアンジェちゃんを聖地から連れ出した甲斐があるってもんや!
     チャーリーは上機嫌だった。
     土の曜日の夕方にアンジェリークを呼び出し、そのまま、こっそりとこの商業惑星へとアンジェリークを
     連れてきたチャーリー。
     今日は、この大きなホテルで惑星の貴族や名士が集まる大きなパーティが催される。
     『一度でいいから、パーティに出てみたいです♪』
     以前聞いたアンジェリークの望み。
     大好きなアンジェリークのために、ドレスも貴金属も用意し、この日を迎えた。
     ちなみにパーティが催されるこのホテルは宇宙経済を牛耳ると言っても過言ではない、
     チャーリーの家が所有するホテルである。
     本来なら予約で一杯のところなのだが、なんとかそこに2つ部屋を取り、今日はこのホテルに泊まって、
     明日聖地へと戻るのだ。
     無論、アンジェリークはそんなことは知らない。
     「ほんなら行こか」
     「あ・・・」
     「ん? どないしたん? 忘れもんか?」
     「いえ・・・そうじゃなくって・・・」
     「?」
     「聖地を抜け出しちゃって・・・」
     「ああ、そんなこと心配せんでも大丈夫や!
      誰にも見られてへんやろ?」
     すっとアンジェリークの肩を抱き、チャーリーはパーティ会場へ向かった。

     「わぁ・・・!」
     大きな広い部屋の豪華なシャンデリアの輝きがアンジェリークとチャーリーを迎える。
     パーティはすでに始まっていて、たくさんの紳士・淑女が和やかに会話を楽しんでいた。
     「ここにおるどんな女の子より、アンジェちゃんが一番可愛いで!」
     「もう・・・」
     チャーリーの言う事もまんざら嘘ではなかった。
     女王候補であるアンジェリークは女王のサクリアを内包している。
     自分では気付かないだろうが、気品とそれなりの風格に、会場の人間は目を奪われていた。
     男性陣からは熱い視線。
     女性陣からは、驚嘆と羨望が混じった視線。
     そんな男性陣の視線を敏感に感じ取り、チャーリーは鼻が高いのと同時に少しのあせりを感じていた。
     「・・・ったく、俺のモンやっちゅーねん」
     「え?」
     「あ、いやいや、なんでもないで!
      喉が乾いてへんか? 飲み物取ってくるからな」
     「あ、すいません・・・」
     エスコートしているチャーリーが側を離れると、待ってましたとばかりに若い男性達がアンジェリークを取り囲む。
     急いで飲み物を取り、引き返すチャーリー。
     「こりゃ、大変やな〜・・・ほら、ちょっとどいてや!」
     アンジェリークといい雰囲気になってるとはいえ、まだ彼女にはっきりした言葉も、それに対する返事も貰ってはいない。
     だからこそここへ来たのだ。
     アンジェリークの望みを叶え、喜んでいる顔が見たかったこと。
     そして、はっきりと自分の気持ちを打ち明けようと思っていること。
     やっとの思いで、アンジェリークの元にたどり着いた時には、グラスの飲み物も半分程になっていた。
     「お待たせ」
     「あ・・・」
     チャーリーの顔を見てホッとするアンジェリーク。
     たくさんの男性に取り囲まれて、困っていたのだろう。
     「やれやれやな・・・」
     アンジェリークはおいしそうにチャーリーの持って来たフレッシュジュースを飲んでいる。
     「チャーリー!」
     空になったグラスをアンジェリークから受け取り、片付けようとしていたチャーリーに声がかかった。
     「あ、なんや、エミリーやん! 自分も来とったん?」
     「“来とったん?”じゃないわよ、冷たいわね!」
     チャーリーよりは少し年が下だろうか、少し冷たい感じのする女性が、チャーリーの側で楽しそうに話している。
     蒼く、身体のラインを強調したドレスが良く似合う美人だった。
     「いやぁ、パーティなんか久しぶりやしなぁ。
      それよりエミリーもずいぶん別嬪さんになったんやなぁ」
     「ふふ、相変わらす口だけは上手いんだから」
     エミリーと呼ばれた女性は手持ちぶさたのアンジェリークにちらりと視線を投げた。
     「あら、可愛らしいお嬢さんね」
     「あ、こんにちは・・・」
     しかしエミリーはぺこっとお辞儀をするアンジェリークを微かに鼻で笑い、再びチャーリーとの話に花を咲かせる。
     「・・・ねぇ、久しぶりに会えたんだから、あっちでゆっくりお話でもしない?」
     「ん〜俺もそうしたいねんけどなぁ・・・」
     久しぶりのエミリーとの話も悪くない。
     だが、アンジェリークの側から自分が離れてしまえば、先程のように男性達がアンジェリークを取り囲むだろう。
     まだはっきりとしてないアンジェリークと自分との関係。
     もしも、アンジェリークがその中の誰かに心を奪われたら・・・
     「もう、何ぼうっとしてるのよ! 
      ほら! チャーリー!!」
     エミリーは強引にチャーリーの腕を引っ張る。
     「───ほしたらちょっとだけやで。
      アンジェちゃん、悪いけどすぐ戻ってくるから・・・」
     「あ・・・」
     誰も知る人がいない中で取り残された形になったアンジェリーク。
     ぽつんと一人でいるアンジェリークの周りに一人、二人と先ほどの男性達が取り囲む。
     色々な人と話をするのは悪くはないが、アンジェリークとしては、やはりチャーリーに側にいてほしかった。
     話をしながらも、チャーリーの方を見ると、エミリーがチャーリーにべったりくっついて楽しそうに話をしている。
     あのエミリーという女性はチャーリーとどういう関係なんだろう。
     ずいぶん仲が良さそうだけれど───
     「・・・で、君は今どこに住んでいるの?」
     「俺の家は代々貴族でね・・・」
     「僕はこの国の王子とは同級生でさ・・・」
     どうでもいいといえば失礼になるのだろうが、アンジェリークには興味のない話を延々とする男性陣。
     生返事をしているアンジェリークをそっちのけで、家柄自慢や自分の金持ちぶりを話している。
     やがて、アンジェリークの我慢の限界がきた。
     いつまでたってもエミリーと話をしていて戻ってこないチャーリー。
     そしてうんざりするような話。
     「ごめんなさい、私ちょっと気分が悪くて───」
     自分達の話にしか興味のない男性達を押しのけるようにして、アンジェリークはパーティ会場を後にした。

     「ふぅ・・・」
     人ごみから解放され、ホテルの庭で外の風に当たる。
     大きな噴水がライトアップされて、水しぶきがキラキラと輝く。
     パーティ会場の喧騒とは対称的な静かな場所をぶらりぶらりと歩いていると、アンジェリークの気分も少し落ち着いてきた。
     「来るんじゃなかったのかなぁ・・・」
     ぽてぽてと歩くアンジェリークの背後から声がかかった。
     「アンジェちゃん!」
     「・・・チャーリーさん?」
     「急におらへんようになるから心配したやんか!」
     「・・・ごめんなさい」
     「どないしたんや? 気分でも悪いんか?」
     「──────」
     「ここ結構寒いから、風邪ひくで。
      な、はよ戻ろ」
     「・・・私・・・」
     もう、パーティ会場には戻りたくない。
     そう言いかけた時。
     「チャーリー!」
     「───エミリー」
     「何してるの? こんなところで」
     「いや、アンジェちゃんが急におらへんようになったからな・・・」
     「───その子なんて放っといて、早く戻りましょうよ」
     「そんなわけにはいかへんねや」
     「あら、だって、その子は自分でパーティ会場を出たんじゃない。
      つまりはパーティに出たくないわけでしょう?」
     「───エミリー・・・」
     「いったいその子はチャーリーの何なの?」
     「・・・それは・・・」
     ぐっと詰まるチャーリー。
     もちろん『大事な人』という気持ちには変わりない。
     だが、それを言ってしまってアンジェリークに拒否されたら───
     「・・・・ずいぶんと趣味が変わったわね。
      私と結婚する話はどうなったの? 
      あなた『結婚しよう』ってキスまでしたじゃない?」
     「え?」
     アンジェリークの胸がつきん、と痛む。
     チャーリーさんが・・・エミリーさんと・・・
     「エミリー!」
     「なによ、私、忘れてないんだから!」
     「あ、私、先に部屋に戻ってますから───」
     もう何も聞きたくない。
     アンジェリークは二人から逃げるようにして、ホテルの庭を走り去った。
     「アンジェちゃん!!」
     「チャーリー!」
     「悪い、ごめんな・・・俺───」
     「───わかってたわ、パーティに女の子を連れてくるなんて・・・
      さっさと行ったらいいじゃない! 大事な人なんでしょ?!」
     「エミリー・・・」
     「あんたなんかよりすっごい良い男を見つけるんだからね!」
     「───ごめんな・・・エミリーやったら俺なんかよりもっとええ男が見つかる!
      それは俺が保証したる!」
     「バカ・・・。
      あんたに保証されても嬉しくないんだから───
      あんたじゃないと・・・」
      微かにつぶやいたエミリーの声は、風に乗って流れていった。


      「チャーリーさん・・・」
      自分が出たいと言ったパーティに、連れて来てくれたチャーリー。
      だが、それはただ、女王試験を受けている自分を気分転換させようとしてくれただけなのかもしれない。
      「───優しすぎるのね」
      優しさ。
      それは時によって残酷である。
      アンジェリークはこみ上げてくる涙をぐっとこらえた。
      ───ガチャリ。
      カギの開く音がして、人が入ってくる気配がする。
      「───アンジェちゃん・・」
      「チャーリー・・・さん?」
      「ごめんな、悪いとは思うたけど・・・
       ノックしたぐらいやったらアンジェちゃんがドアを開けてくれへんような気ぃしてな───
       合鍵使わしてもろうて、勝手に入って来たんや・・・」
      「・・・・・・」
      チャーリーの言葉にアンジェリークがうつむく。
      確かに、チャーリーの言った通りだった。
      醜い感情にとらわれた自分を、そしてその感情を表に出してしまいそうになる自分を見られたくなかったのだ。
      「・・・エミリーはな、兄妹みたいに育ったんや。
       俺の家とあの子の家は隣同士でな、あの子の両親が亡くなってからは会うたことはあらへん。
       遠い所に引っ越してしもうたからな───」
      「・・・・・・」
      「小さい時から病弱でな、あんまり外に遊びに行かれへんかったんや。
       俺はそん時まだ幼稚園ぐらいでな・・・ま、初恋っちゅーか、なんちゅーか・・・」
      「チャーリーさん・・・」
      「キスしたのも事実や。
       大人の真似事みたいなやつやけどな」
      真実を口にするのには勇気がいる。
      それがどんな真実であれ。
      アンジェリークは、チャーリーの話をじっと聞いていた。
      「・・・・・・」
      「だけどな、俺が・・・好きなのはアンジェちゃんだけや、これはホンマなんや」
      「チャーリーさん・・・」
      「パーティに出たいって言ってたアンジェちゃんを連れ出してしまったことも今となっては後悔してる。
       俺がアンジェちゃんをもっと、楽しいパーティに連れて行けばよかったってな」
      「ごめんなさい・・・私が・・・」
      「いや、アンジェちゃんは何も悪うない。
       ごめんな、アンジェちゃんに嫌な思いをさせてな」
      チャーリーは窓際まで歩き、カーテンを開けた。
      「綺麗やな・・・
       こんな綺麗な風景を見れるのも、あの金の髪の女王のおかげや。
       あの人がちゃんと宇宙を治めてくれてるからこそ、今、俺らはこんな綺麗な風景が見れるんやな」
      「──────」
      「そして・・・
       アンジェちゃんも試験にクリアすれば、また宇宙を治める女王になって───」
      「チャーリーさん・・・」
      アンジェリークがチャーリーの後ろからきゅっと抱きつく。
      「俺・・・子供の時とは違って、アンジェちゃんと・・・その・・・」
      チャーリーは自分に回されたアンジェリークの腕を優しくつかんで引き寄せた。
      「アンジェちゃんは俺のこと・・・どない思ってるんやろう」
      「それは・・・」
      「俺は、アンジェちゃんとできればずっと一緒にいたいって思ってる。
       心の底から言える。
       アンジェちゃんが好きや・・・ってこと」
      ゆっくりとチャーリーの顔が近づいて、アンジェリークは瞳を閉じた。
      「・・・明日になったら、また聖地に戻って忙しい日が始まるんやな・・・」
      少し唇を離し、チャーリーがささやいた。
      「・・・ええ」
      「ほんなら・・今だけは───
       ───愛してる、アンジェリーク・・・」
      「チャーリーさん・・・」
      再び二人の影が重なるのを、夜景は優しく包んでいた。




氷魚様に捧げしキリリクのチャーリーとアンジェのお話。
甘いお話で『ちゅう♪』をご希望でした。
えと、まず、チャーリーの過去を捏造しました(爆)
話の流れとして目をつぶっていただければ・・・と思います(;^_^A
あと、いくら自分のホテルだからって勝手に合鍵使うのも・・・
はい、申し訳ないっす(;;)
こちらも話の流れとして・・・(激爆)
とにかく読んでいただいてありがとうございました。m(_ _)mペコリ


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