ばーすでー
リュミエールの誕生日。
アンジェリークは私邸へと招待されていた。
大好きなリュミエールからの招待に昨日は緊張して眠れず、今日の日を迎えたのだ。
「髪の毛は・・・さっき洗ったし───」
念入りに鏡の前でチェックをし、くるりと一周しておかしなところがないかどうか見る。
「うん! 大丈夫!
あとは──────」
あとは、パンツである。
アンジェリークもお年頃。
「『アンジェリーク・・・私は今日の夜を貴女と一緒に───』なんて言われちゃったら〜!!!
そしたら、そしたら・・・きゃあああああ♪ 私ったら〜!!!!!!」
バンバンと鏡台を叩いて一人でおかしな行動を取るアンジェリーク。
案外眠れなかったのはこんな妄想のせいかもしれない。
スカートをめくり、綺麗なレースのついた下着を確認して、アンジェリークは気合を入れた。
「これでよしっと♪」
リュミエールに渡すためのプレゼントを持って部屋を飛び出すアンジェリーク。
迎えの馬車に乗り、ドキドキしながらリュミエールの元へ向かうのであった。
「よくいらしてくださいましたね、アンジェリーク」
「リュっ、リュミエール様!」
かちんこちんになっているアンジェリークを見て、リュミエールはおっとりと微笑んだ。
「今日は来てくださって嬉しいですよ。
お天気も良くて・・・貴女の元気な顔を見れて・・・」
「はひっ!
私も天気で元気が良くてよかったです!」
ああ〜!!
何を言ってるんだろう、私ってば!
リュミエール様、あきれちゃってるんじゃないかしら?
目がぐるぐるしているアンジェリークをくすくす笑いながら中へと案内するリュミエール。
「さぁ、中へどうぞ」
「は、はい」
広い部屋に通されたアンジェリークは早速リュミエールへ誕生日のプレゼントを渡す。
「これ・・・リュミエール様に喜んでいただけるかどうかわかりませんけれど・・・」
「私にですか?
───ありがとう、アンジェリーク・・・開けてもよろしいでしょうか?」
「はい!」
リュミエールへのプレゼントは画材セットである。
チャーリーに頼んで、手に入りにくい物ばかり集めてもらったのだ。
「これは・・・素晴らしいですね。
これを本当にいただいていいのでしょうか?」
リュミエールの顔に喜びの色が浮かんでいるのを見て、アンジェリークも安心した。
「もちろんです! 使ってください!」
「ありがとう、アンジェリーク。
───今、お茶でもいれますね・・・」
「あ、私がやります!」
アンジェリークのもう一つのプレゼント。
それは、リュミエールのためにおいしいハーブティをいれること。
さんざん練習をしてきたのにも関わらず、いざリュミエールを前にすると手が震える。
「アンジェリーク・・・」
「きゃあ!」
呼ばれて、思わずアンジェリークはカップを落としてしまった。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「だ、だ、大丈夫です───でも・・・リュミエール様の大事なカップを・・・」
カップは幸いにも無事だった。
慌ててカップを拾おうとしたアンジェリークとリュミエールの手が重なる。
「あ・・・」
「・・・あ」
同時に手をひっこめる二人。
リュミエールとアンジェリークの頬がほんのりと赤くなる。
「───貴女に怪我がなくてよかった。
お茶は私がいれますから、貴女はゆっくり座っていてくださいね」
「あ、は、はい・・・」
カップを取り替え、アンジェリークの前にハーブティを置いて、リュミエールはゆっくりと
アンジェリークの隣に腰を降ろした。
「私の私邸に遊びに来てくれた貴女へのプレゼントです、聞いてくださいますか?」
ハープを取り出し、リュミエールが微笑みかける。
「かたじけないでござるです!」
アンジェリークはもうパニック状態である。
リュミエールの前での数々の失言と失敗、そしてすぐ隣にリュミエールが座っている事。
そんなアンジェリークの気持ちを知ってか知らずか、リュミエールの美しい指先が静かに
動き出した。
音の帯が広がり、美しく調和し、また広がって消えていく。
それはアンジェリークの心を落ち着かせ、そして、眠りへ誘いこむのには充分だった。
「・・・リーク? アンジェリーク?」
演奏が終わったリュミエールはそっとアンジェリークの名を呼んだが、アンジェリークの方は一向に
目を覚ます気配はない。
「───ンツ・・・・・」
「?」
「ミエール様のために・・・新しいパンツ───ん・・」
「ぷっ」
顔を赤くしながらも、思わず吹き出すリュミエール。
この日のためにあの素晴らしい画材セットを用意してくれていたのだろう。
そして、今日のために新しいパンツまで───
くすくすっと笑って、リュミエールはアンジェリークの柔らかい髪の毛をそっと撫でた。
「───私もそうなればいいなとは思っていたんですけれど・・・
もう少し先のようですね、アンジェリーク」
リュミエールの気持ちをよそに、ぐっすりと眠り込んでいるアンジェリーク。
「元気で・・・優しい、そんな貴女を愛しています───」
この言葉を言うのはもう少し後になることだろう、そう思いながら愛しい女性の顔を見つめる
リュミエールだった。
「どっ、どうして私はここに寝ているの?!」
明け方、目を覚ましたアンジェリークは見慣れた自分の部屋で飛び起きた。
必死に寝ぼけた状態の頭をフル回転させる。
おそらくはというか、絶対的に、眠り込んでいたアンジェリークをリュミエールが
ここまで運んでくれたのだろう。
「・・・うん?」
枕もとに置かれた一通の手紙がアンジェリークの考えが正しい事を証明していた。
それはリュミエールからのものだった。
『 とても楽しい時間を過ごせて嬉しかったです。
またご一緒できることを願っています。
リュミエール 』
「・・・・・新しいパンツだったのに、私ったら〜〜〜〜!」
新しいパンツの活躍はさておき、リュミエールの気持ちもわからず、アンジェリークの苦悩は
続くのであった───
BACK HOME