Skipup Search Webspace-jp




仔猫アンジェ オスカー様編 その1



「ルヴァ様!」
執務室のドアが勢いよく開かれ、地の守護聖ルヴァのもとに炎の守護聖オスカーが飛び込んできた。
額に汗を浮かべ、左手には女性物の洋服、右手には子猫を持っている。
「・・・おや、オスカー。どうしたんですか?」
「ア、アンジェリークがネコに・・・」
「───アンジェリーク? ・・・ネコ?」
子猫はおとなしくオスカーの右手にぶらさがっている。
金色の毛をもつ、とても愛らしい子猫だった。
「ど、どうしたら?!」
「あ、あの・・・?」
いったい何のことやらわからないルヴァにオスカーはアンジェリークが猫になった状況を話した。
森の湖で二人は甘い時間を過ごしていたらしい。
昼食にはそこでバーベキューをしようと、遊びに来ていたのだが、森の奥のきのこをオスカーが見つけた。
以前にもオリヴィエやリュミエール達とここでバーベキューをしたことのあるオスカー。
確かこれは“香り茸”という大変おいしいきのこだったという記憶があり、それをアンジェリークに
食べさせようとして・・・
「ルヴァ様!」
「オ、オスカー、再度聞きますが、その子猫が・・・アンジェリーク?」
「はい!」
オスカーは、ルヴァの目の前に子猫を差し出した。
子猫は可愛らしい声で『みぃ』と鳴いた。
「でも、オスカー? あなたはきのこを食べなかったのですか?」
「───はぁ。
 俺は以前食べたことがありましたし・・・
 その・・・とてもうまかったんでアンジェリークに食べさせようと思って・・・」
戸惑いながらも、照れくさそうに話すオスカーをルヴァは微笑みながら見つめていた。
「笑ってる場合じゃありませんよ、ルヴァ様!」
オスカーに言われ、ルヴァははっと我に返った。
急いで本棚から植物図鑑を取り、その“香り茸”がのっている頁を開き、オスカーに “猫茸”について
説明を始めた。
“猫茸”はとても珍しいきのこで“香り茸”とよく似ていること。
食べてしまうと、読んで字のごとく『猫』になってしまうということ。
現時点で解毒剤はなく、食べた人間の体内から“猫茸”の成分が消えてしまわない限り元には戻らない
ということ。
そしていつ戻るかは食べた人間の体質によって、様々なので一概に何日で戻る、とは断言できない
ということ。
後は“猫”になっている間の記憶はなく、元に戻った時は“猫”になる直前からの記憶になる
ということも。
「はぁ・・・」
説明を聞き終え、オスカーはため息をついた。
「それで、この事をジュリアスには───」
「そ、それは───
 とにかくアンジェリークは俺が面倒見ますんで、ジュリアス様には・・・」
「・・・そうですね、わかりました。
 ジュリアスに何か聞かれましたら、私からうまく言っておきますね」
「ありがとうございます、ルヴァ様!」
オスカーはお礼を言い、ルヴァの執務室を後にした。
───こうして子猫アンジェとオスカーの生活が始まったのである。

可愛い子猫アンジェとの生活。
それは楽しい反面、結構大変なものであった。
朝は子猫アンジェの前足に軽く口付けをするところから始まる。
「よう、お嬢ちゃん、おはよう。
 今日も可愛いお嬢ちゃんの側にいられて嬉しいぜ」
「みゃう♪」
その後、朝食。
ミルクとパンをちぎったのを子猫アンジェに与える。
「おいしいか?」
「にゃ」
「おいしそうに食べるお嬢ちゃんも魅力的だな」
「にゃう♪」
子猫アンジェがトイレを終えると、オスカーの出勤タイムである。
他の守護聖達に見つからないように、小さなカバンに子猫アンジェを入れて聖殿に出勤。
子猫アンジェをカバンに入れたまま執務を始める。
手早く執務を終わらすとやっと子猫アンジェをカバンから出す。
嬉しそうに部屋を走り回る子猫アンジェを見ながら、剣の手入れを行う。
オスカーの手の動きを見て、飛びかろうとする子猫アンジェ。
「───っと、危ないぜお嬢ちゃん。
 こいつに触れると、俺に触れるのと一緒で怪我をするからな」
「なぅ・・・」
「ダメだ。
 可愛いお嬢ちゃんに怪我をさせるわけにはいかないんでね」
少しキツめの口調で注意し、剣の手入れを終えてしばらくすると帰宅時間。
再びカバンに子猫アンジェを入れて私邸に戻る。
夕食を終え、子猫アンジェとの楽しいひとときを過ごすと就寝。
「俺の側で、俺の夢を見るんだぜお嬢ちゃん?」
「にゃん♪」
朝と同じく前足に口付けするオスカー。
布団に入り、小さな温かいぬくもりを感じながら眠るオスカー。
「お嬢ちゃんが人間の姿だったらこうはいかないが───
 こういうのも悪くはないもんだな、お嬢ちゃん」
こうして一日が終わる。
そんな生活が三日ほど過ぎた頃にやはり、というか起こらなきゃ話が進まないからというか、
事件が起こったのであった。



BACK
NEXT
HOMEに戻る



Skipup Search Webspace-jp