ここは聖地の聖殿にある大ホールです。
そしてここでは、にぎやかな宴が催されていました。
別に何か特別なイベントがあるわけではありません。
ただ、この話の都合上、宴が催されているのです。
出席者は守護聖全員と教官・協力者、そして女王候補二人です。
今夜は無礼講ということでワインやウイスキー、ブランデー、スコッチ、テキーラ、ウォッカ等
アルコールやごちそうが所狭しと並んでいます。
わいわい、と賑やかに宴は進み、かなりアルコールの入ったオリヴィエ様が『王様ゲーム』をしようと
言い出しました。
「あ〜ええなぁ!」
即座に同意したのはチャーリーでした。
チャーリーは早速、自分の商売道具から割り箸を取り出し、割り箸に番号を付け始めています。
「王様・・・ゲーム?」
ゲームの内容がわからない人たちにオリヴィエ様は説明を始めました。
王様ゲームとは参加者全員で番号つきのくじを引き、そのくじには1つだけ王様と書かれたくじがあり、
その王様のくじを引いた人は他の人に何でも命令できる、というゲームです。
「それは一人だけに命令できるんですか? オリヴィエ様?」
質問をしたのはマルセル様です。
「う〜ん★ 一人でも、二人にでもできることにする♪
で♪ 命令が聞けない人は退場!」
「ををををををを!!!」
アルコールが入っているせいか異様な盛り上がりを見せる守護聖様や教官・協力者様達。
番号つきの割り箸を色つきのグラスに入れ、各自一本ずつ引きました。
最初に王様になったのはセイラン様でした。
「僕だね・・・」
前に出て、セイラン様は命令を下しました。
「じゃあ───3番は15番のもみあげを思いっきりつねって」
髪の毛をかきあげながら、とても楽しそうにセイラン様は命令しました。
3番はマルセル様。
そして15番はティムカ様です。
「───ほら、早くしなよ」
くすっ、と笑うセイラン様。
お酒が入っているせいでもありましょうが、心から楽しそうです。
そしてみんなも『早くしろー!』とか『命令だぞー、早くやれ!!』とヤジを飛ばします。
「ティムカ、いくよ!」
マルセル様はティムカ様のもみあげ部分を優しくつまみ、そしていきなり力を込めると、
ねじり上げるようにつねりました。
「痛いですーーーーー!!!!!」
「痛い? うふふ♪」
ティムカ様は涙をぼろぼろこぼしています。
それを見て、再び盛り上がる一同。
命令したセイラン様、そしてティムカ様をつねったマルセル様に拍手が贈られました。
泣き上戸なのでしょうか、つねられたティムカ様は泣き出し、そしてホールから飛び出して行って
しまわれました。
それを追いかけるレイチェル。
レイチェルはティムカ様とラブラブで、心配になったのでしょう。
アンジェリークに
「ゴメン! ティムカ様心配だから!」
といって出て行ってしまいました。
この時点でティムカ様とレイチェルが王様ゲームから外れました。
17番まであった割り箸を2本外し、再び王様ゲーム再開です。
次の王様はランディ様でした。
ランディ様は酔いながらも元気良く命令を下します。
「えーっと! 6番は僕が言う早口言葉を言うこと!!!」
今回6番の割り箸を引いたルヴァ様が立ち上がりました。
「あ〜・・・早口言葉ですか〜」
「じゃあ・・・
ゆめじうたじおぼんこぼんリンゴモモコ大介花子ラッパハッパカウスボタン阪神巨人いくよくるよ!」
一気にまくしたてるランディ様。
「ををっ!」
「ランディ、すげぇ!」
やんや、やんやの一同。
「え、ええええ〜〜?」
しかし、あまりの早さと長さについていけないルヴァ様。
おろおろしている間に失格となりました。
そしてランディ様の早口言葉に驚愕している人間がここにも一人。
チャーリーです。
「あっか〜ん! このままやったらランディ様に負けてまう!
も一回出直しや!!!」
こうしてルヴァ様とチャーリー様はホールを後にしました。
割り箸がまた二本少なくなりました。
ゲームは白熱していきます。
次に王様になったのはオリヴィエ様でした。
「んっふっふっふっふっふ!
じゃあ1番は10番にキ・ス★ それも思いっきり熱いやつ〜♪♪」
ここでオリヴィエをのぞいた皆がハッと気づきました。
『それもありか!』
この場に残っている女王候補のアンジェリークに視線が集中します。
命令されれば、彼女の柔らかい唇がGETできる! と。
悶々とする殿方達。
一方、アンジェリークは飲み慣れないアルコールが入っているせいでうつらうつらしています。
今回の1番はエルンスト様、10番はゼフェル様でした。
「あ・・・あの・・」
「おいっ! 何でヤローとキスしなきゃいけねーんだよ!」
「だ★め★ 王様の命令は絶対だもの♪」
オリヴィエの言葉に一同は惜しみない拍手を贈ります。
それを受けて、エルンスト様は眼鏡を押さえながらゼフェル様に近づきました。
エルンスト様の目がすわっています。
「───失礼します、ゼフェル様」
「・・・お、おい!」
・・・ぶっちゅうぅぅぅぅぅ・・・・・・っすぽん。
どよっ!
部屋の中の空気がなにやら変な雰囲気になっています。
心なしかキスをしたエルンスト様も、されたゼフェル様も頬が赤いようです。
「うわーーーーん!!
エルンストさんのばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
エルンスト様がゼフェル様にキスするのを見て、メルが部屋を飛び出しました。
「あ、メル!」
続いてエルンスト様。
「エルンスト!」
それに続いて何故だかゼフェル様。
そしてゼフェル様を追ってランディ様、マルセル様が部屋を出て行きました。
───現時点でホールに残っているのはジュリアス様、クラヴィス様、オスカー様、リュミエール様、
オリヴィエ様、ヴィクトール様、セイラン様、アンジェリークの8人です。
最初の遊び心などなく、かなり真剣になっていくアンジェリークを除いた7人。
割り箸を8本にして、ゲームは続きます。
次の王様は再びセイラン様でした。
「・・・また僕かい?
じゃあ─────────」
この頃になるとお酒のビンが乱立し、各自が引いた番号もかなり限定されてきます。
「4番は5番にタメ口を聞く事。
セリフは・・・そうだね。
“おい、○○! 最近お前調子こいてんじゃないのか?”
でいいよ」
4番はオスカー様、そして5番はジュリアス様でした。
「た、た、た・・・タメ口って・・・」
「どうしたのだ? オスカー?」
涼しげなジュリアス様のお顔がいっそうオスカー様の恐怖心を煽り立てます。
これには皆が興味津々で事の成り行きを見守っていました。
「早くせぬか、王様の命令だぞ」
といいながらも目で無言の圧力をかけるジュリアス様。
「し、しかし───」
「どうしました? オスカー様?」
2回目の王様であるセイランも急かします。
酒ビンを取り、一気に流し込むと、オスカー様は意を決したようです。
「おいジュリアス!
最近お前調子こいてんじゃないのか?」
まくしたてるように話すオスカー様。
ジュリアス様のお顔は能面のようになっています。
堪えきれず笑い出すクラヴィス様。
「───僕としてはもう少し感情を込めて言ってほしかったな。
ま、でもこんなものだね」
セイラン様も最初の命令を下した時と同じく、非常に楽しそうに笑いました。
席に戻ったオスカー様はジュリアス様に話しかけます。
「も、申し訳ありません! ジュリアス様!」
ジュリアス様の額にはうっすらと怒筋が浮かんでいます。
「──────」
「ジュリアス様!」
「構わぬ───その代わり・・・」
声のトーンを落とし、ひそひそ声で話すジュリアス様。
皆のお酒を飲むペースがさらに上がりました。
滅多にというか絶対的に見ることの出来ないオスカー様のうろたえぶり。
当事者以外にとってはとても楽しい命令です。
───そして何より、王様ゲームというよりはアンジェリークの唇争奪戦と化した会場。
少しの間を置き、再び割り箸を引く8人。
今度の王様は先ほどこの上ない恐怖感を味わったオスカー様でした。
「おーーーーっ!」
これで先ほどジュリアス様に言われたことを実行すれば名誉挽回の大チャンスです!
そう、二人の交わした密談は、オスカー様が王様になったら、ジュリアス様の番号とアンジェリークの
番号を言ってキスをするように命令する、というものでした。
ジュリアス様の番号は2番。
ちらっと見たアンジェリークの番号は確か7番。
すっくと立ち上がって前へ進みます。
ジュリアス様の心の準備も万端でした。
「あっ! 申し訳ありません、クラヴィス様」
その時、お酒に酔ったせいでしょうか、リュミエール様がクラヴィス様の衣服に少し飲み物を
こぼしてしまいました。
「───構わぬ」
一生懸命タオルでこぼしてしまった飲み物を拭き取るリュミエール様。
クラヴィス様を挟んで反対側に座っていたアンジェリークも手伝います。
幸いすぐに拭き取ったことと、元々黒い服なのでしみにもなりませんでした。
「申し訳ありません、中断してしまいまして・・・どうぞ」
リュミエール様はにっこり笑って王様になったオスカー様の命令を待ちました。
「えー・・・じゃあ2番が7番に激烈に熱いキスをする!」
「ちょっとー★」
ここでオリヴィエ様の物言いが入りました。
密談がバレたのか、と少し慌てるジュリアス様とオスカー様。
しかし、オリヴィエ様の物言いは、それはさっきやったからもうちょっと違う命令にしたら?
というものでした。
「そ、そうだな───
それじゃ・・・2番と7番はこれから二人で甘く熱い夜を過ごす!」
どよよよよよっ!!!
場内がざわめきます。
いくらなんでもそれは、と普通なら止めに入るはずのジュリアス様は少し嬉しそうに、
そしていかめしい顔を作りながら立ち上がりました。
「オリヴィエ、王様の命令には絶対服従なのだな?」
「そうだよん★」
「そうか───
ならば仕方あるまい、2番は私だが・・・」
高鳴る胸を押さえるジュリアス様。
アンジェリークが立ち上がるのを待ちます。
「7番は誰だ?」
皆が自分の割り箸に書かれた番号を確認します。
「きゃ・・・」
アンジェリークの声があがりました。
これからの事を考えると、ジュリアス様は爆発しそうなぐらい心臓がドキドキしています。
そして立ち上がったのは───
「ク、クラヴィスっっっっっっっっっ?!」
驚愕するというのはまさにこのことでしょうか。
オスカー様もぽかん、とクラヴィス様を見ています。
「どうした・・・
王様の命令には絶対服従なのだろう?
───ならば二人で“甘く熱い夜”を過ごすとするか・・・」
「そ、それは───」
ぎろりん! とオスカー様を振り返るジュリアス様。
ぷるぷると頭を振って涙目のオスカー様。
何のことはありません。
ジュリアス様とオスカー様の密談を見て、何もわかっていないアンジェリークを除いて、残りの全員は
二人がどんな会話を交わしていたか察していました。
そして、リュミエール様がクラヴィス様にワザとお酒をこぼし、こぼしたお酒を拭きながら素早く
アンジェリークとクラヴィス様の割り箸を取り替えたのでした。
こういったことのチームワークは完璧でした。
「行くか・・・」
「クラヴィス! やめぬかっっっっっっっ!!
クラヴィスっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!」
ジュリアス様に近づいていきなり抱え上げると、有無を言わさずホールから消えるクラヴィス様。
「きゃははははっは!
ジュリアスの顔見たぁ〜!!!」
オリヴィエ様は大喜びです。
「そうですね、やはりズルをしてはいけませんよね」
くすくす笑うリュミエール様。
「ジュリアス様には悪いが───」
大笑いしているヴィクトール様。
「後を追いかけなくていいんですか? オスカー様?」
ふぁさっと美しい髪をかきあげるセイラン様。
言われて急いで後を追いかけるオスカー様。
オロオロしているアンジェリーク。
ひとしきり大笑いしたオリヴィエ達でしたが、再びゲームを始めました。
「あ、私ですね!」
次の王様はアンジェリークでした。
にこにこ笑いながら、立ち上がるアンジェリーク。
そして彼女の口から出た言葉に残った全員は愕然としました。
「もう遅いのでお開きにしましょう」
そんな───
何のために俺達は・・・・
でも王様の命令は絶対です。
当の王様となったアンジェリークはお皿やコップを片付けてさっさと部屋を出ていってしまいました。
「待ってよ、アンジェリークってばぁ〜★」
「・・・そりゃないぞ」
「──────」
「ああ・・・・」
外からまだ聞こえてくるジュリアスの怒声の中、こうして、アンジェリーク唇争奪線もとい
王様ゲームは静かに幕を閉じたのでした。
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7777番をげっちゅ〜されたもにら様にお届けした小説です。
お酒を呑んで騒いでいる守護聖様をというリクで、こんなお話になってしましました(;;)
それでも快く受け取ってくださったもにら様のお優しい心に感謝いたします!
文中、紫峰には珍しいちょっと怪しい表現がありますが、それもお酒の上でのことで
ということで流してくださいませ。m(_ _)mペコリ
もにら様、そして読んでくださった女王候補様、ありがとうございました!!
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