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世界で一番好きな場所




         “世界で一番好きな場所”
         そこにロザリアはいた。
         ここにいると、自分がどれだけ落ち着くか、反面どれだけ胸が高鳴るか、
         オスカーにはわかっているのだろうか。
         「どうした? ロザリア?」
         「いいえ、なんでもありませんわ」
         温かく、何よりも安心して身を任せていられる場所。
         そう。
         それは、オスカーの腕の中。

         ───ロザリア。
         普段は気高く、まるでトゲで自分を守っている薔薇のように美しいロザリアが、
         自分の腕の中で安心してくつろいでいる様子を見て、オスカーは愛しくてたまらない。
         いくら女王になるために勉強してきたとはいえ、女王試験という重責を背負わされたロザリア。
         決して弱音を吐かず、それに立ち向かっていくその姿はオスカーの心を捉えて離さなかった。
         ふと思う時がある。
         アンジェリークのように誰かが救いの手を差し伸べられずにいられない女性より、
         ロザリアのように毅然として何でも自分で向かっていく女性の方が精神的に
         脆いのではないか、と。
         だからこそ、せめて自分の前ではゆっくりと安心して過ごせるようにしてやりたい。
         ロザリアが望むなら何だってしよう。
         「・・・愛してるぜ、ロザリア」
         「オスカー様・・・」
         ロザリアの肩に回していた手に力を込めて、オスカーはロザリアに熱い口づけを贈った。



         今日も“世界で一番好きな場所”に行こうとロザリアは森の湖に向かって歩いていた。
         日の曜日の約束。
         それは日によってオスカーの私邸だったり、公園だったりと場所は違うが、
         いつも二人で過ごしていた。
         今日も約束の時間より早めに森の湖に着いたロザリアに衝撃的な光景が飛び込んできた。
         「もう・・・オスカー様ったら」
         楽しそうな女性の声。
         そして、ロザリアとは全く雰囲気の違う大人の女性とオスカーがいた。
         それだけなら何ともなかったのだが、オスカーはその女性の腰に手を回して何やら
         楽しそうにしている。
         オスカーの女性遍歴を知らないわけでもなかったが、実際、目の当たりにすると
         それはとても衝撃的なものだった。
         “世界で一番好きな場所”に他の女性が───
         あそこは私の・・・私だけの場所だと思っていたのに・・・
         自分と一緒に時間を過ごすようになってからは、オスカーの女遊びも止まったと思っていたし、
         また、他の守護聖達もそう言っていた。
         それは自分に対して、少しはオスカーが本気になっていたものと思っていた。
         それなのに・・・
         ただの自惚れでしかなかったのかしら───
         ショックを受けているロザリアに気付かず、二人はまだ楽しそうに戯れている。
         やがて。
         「あら、私はお邪魔のようですわ、オスカー様」
         その女性がロザリアの姿を認め、オスカーの腕のからすっと身体を抜いた。
         「そうか・・・」
         「では、これで───」
         律儀にロザリアにもお辞儀をして、女性は森の湖から姿を消した。
         「よぉ、ロザリア!」
         「・・・・・・・」
         「なんだ、どうしたんだ? 具合でも悪いのか?」
         いつもの調子でロザリアに話しかけるオスカー。
         一向に悪びれた様子はない。
         「不潔ですわ! オスカー様!」
         「お、おい!」
         「私、今日は帰らせていただ・・・」
         全てを言い終わらないうちに、ロザリアの身体が宙に浮いた。
         「オスカー様!」
         「───焼きもちを妬いてくれるなんて嬉しいぜ、ロザリア。
          だが、誤解されたままってのも嫌なもんでな」
         ロザリアを抱き上げたまま、オスカーは歩きはじめる。
         「降ろしてください! 人が見ていますわ!」
         案の定、あちこちから熱い視線が送られてくる。
         「誰が見ていようが構わないさ。
          ロザリアが俺の腕の中にいればそれで───」
         あまりの恥ずかしさにロザリアの顔が赤くなる。
         オスカーはロザリアを抱き上げたまま、自分の私邸へと歩いていった。


         「本当はもうちょっと後にしたかったんだが───」
         私室のドアの前でオスカーが呟く。
         「?」
         「ロザリア、少しの間目をつぶっていてくれないか?」
         「目を?」
         「そうだ、俺が目をあけていいと言うまでだ」
         「───わかりましたわ」
         さっきまでの嫌な気分はすでに吹き飛んでいた。
         一体オスカーが今から何をしようとしているのか、ロザリアには見当もつかなかった。
         ぎゅっと目をつぶったロザリアに軽くキスをして、オスカーは私室のドアを開けた。
         目をつぶった暗闇の中ではオスカーの手だけが頼りだった。
         ゆっくりと優しくロザリアを導く手。
         少し歩いたところでオスカーに止まるように言われ、ロザリアはその場で停止した。
         「手を離すが・・・まだ目をあけるなよ、ロザリア」
         「・・・わかりましたわ」
         いままで側にいたオスカーの気配が消え、少し離れたところからゴソゴソと
         何かしている音が聞こえてくる。
         やがて───
         ふわっとした感触がロザリアを包んだ。
         「ロザリア・・・もういいぜ」
         オスカーの声が耳元で聞こえ、おそるおそる目をあける。
         「・・・?」
         目の前に白く薄い布地があり、それが何かを確認する前に隣にいるオスカーが口を開いた。
         「驚かそうと思って用意していた。
          あの女性に衣装を頼んでいたんだが・・・
          ウエストの部分のカッティングがどうもうまくいかなかったらしくってな。
          まさか直接ロザリアにウエストのサイズを尋ねるわけにもいかないだろう?
          身体つきからだいたい同じぐらいだと思って、今日あの場所に呼んだんだ」
         「オスカー様・・・」
         「そんなわけで、まだ肝心のウエディングドレスはないが───」
         オスカーはブーケをあげて、ロザリアの顔を覗き込む。
         「ロザリア、お前は何のためにこの飛空都市に来たと思う?」
         「それは───女王になる・・・」
         「違うな、俺と出会って、俺と一緒に時を過ごすためだ」
         「・・・・・・・・」
         「───ジュリアス様は女王陛下に忠誠を誓っている。
          そのジュリアス様に俺は忠誠を誓った。
          そして・・・ロザリア、お前には永遠の愛の忠誠を誓う・・・」
         「オ・・スカー様・・・」
         「俺と一緒に永い時を過ごしてくれ。
          お前を何よりも、誰よりも愛している」
         「──────」
         言葉が出なかった。
         その言葉の代わりにロザリアは小さく頷いた。
         大きく温かい手がロザリアの身体を包み込む。

         “世界で一番好きな場所”
         そこは他の誰でもない、ロザリアだけのもの───




すまんちーロザリー様。オイラ精一杯っす(;;)
甘い話は(というか全部だけど・・・(爆))苦手っす。
ということでお納めいただければ嬉しいです。あう(;;)



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