偽七夕伝説 その2
「よいか、七月七日は絶対雨を降らせるのではないぞ」
「そんなこと言われてもねぇ★」
「オリヴィエ!」
「きゃはは、ジョーダンだよ。
でも・・・タダ働きはねぇ〜〜〜」
天候の番人であるオリヴィエは、意味ありげな目でジュリアス天帝を見た。
「───何が望みだ」
「そうだね、本当は帝妃って言いたいとこだけどさ」
「オリヴィエ!!!」
「はいはい。
───じゃあ、帝妃に贈ったのと同じ首飾りで手をうつよん★」
「なっ・・・」
「あれぐらいくれたっていいんじゃない?
何たって『故意』に天候を変えるんだからさ」
「・・・わかった」
アンジェリークに怒られ、オリヴィエからは高い代償を要求されふんだりけったりのジュリアス天帝で
あった。
七月七日、当日。
高い首飾りを贈ったおかげで、見事に空は晴れわたっていた。
ミルキーウェイと呼ばれる天の川がキラキラと輝いている。
両岸から元気よくランディかささぎとマルセルかささぎが橋を渡し、オスカー彦星と織姫の何年ぶりかの
ご対面となった。
対岸に人影が見え、オスカー彦星は橋を渡る。
「お迎えにあがりました」
頭を下げる女性を見て、驚くオスカー彦星。
・・・織姫ってこんな顔していたか?
数年間会っていないうえに、毎日のように違う美女と遊んでいたオスカー彦星は迎えにきた織姫を
まじまじと眺めた。
流れるような水色の髪、穏やかに笑みをたたえている顔、すらりとした容姿。
「何年ぶりでしょうか・・・」
「そ、そうだな」
思わずその場で・・・とぐらつく理性を抑え、導かれるまま織姫の住居に向かう。
オスカー彦星の我慢の限界も織姫が扉を閉めるまでのことだった。
褥に行くのも煩わしく、その場で織姫を押し倒したのである。
「な、何をなさいます!」
「何年ぶりかの逢瀬に、そんなセリフはないだろう?
俺は今までお前に会うのをずっと我慢していたんだぜ?」
ずいぶん勝手なセリフではあるが、オスカー彦星は真剣だった。
早く、織姫と一つになりたい、愛し合いたい。
その想いだけがオスカー彦星の頭を支配していた。
「ですが───」
抵抗する織姫の言葉はオスカーの唇によって続かなかった。
何度も何度も繰り返される熱い口づけに、織姫の抵抗も力を無くしていく。
織姫の耳元に甘い言葉をささやきながらも巧みに衣服を脱がせていくオスカー。
そして、いざ、本番突入というまさに時にオスカーは人の気配を感じて後ろを振り返った。
「───呪い殺すぞ・・・」
遥か昔に聞いた事のある、懐かしい声。
おぼろげではあるが、見覚えのある顔。
そう、そこには数年前に見た艶やかな黒髪を持つ本物の織姫、クラヴィス織姫が無表情で立っていたのだ。
「あ・・・」
「・・・リュミエール」
「クラヴィス様・・・」
慌てて衣服の乱れを直すリュミエールと呼ばれた女性。
「彦星、そこで何をしている・・・」
「え、あ、いや、その・・・
今日は・・・天気が良くって・・・」
しどろもどろのオスカー彦星に、冷たい目を向けるクラヴィス織姫。
「天気が良くって、人の侍女に手を出したというわけか・・・」
「じ、侍女? い、いや・・・これは・・・」
「よもや私の顔を忘れたわけではあるまいな?」
「そ、それは・・・」
「・・・そうか、では二度と忘れぬ事の無いように覚えこませてやろう・・・」
あまりの驚きに現状がよくわかってないオスカー彦星を引きずって褥に消えるクラヴィス織姫。
その後、褥から悲鳴に似た絶叫が聞こえてきたのは言うまでもない。
「今日は晴れていてよかったわね」
「ええ、ここ数年お天気が悪かったから、今ごろはきっと彦星と織姫も久しぶりに会えて喜んでいるわね」
天界での騒ぎも知らず、地上にいる人々は綺麗に輝いている天の川を見ながら、そんなことを話していた。
───知らない事は良い事である。
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