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七夕の日




            素敵・・・
            ため息をつきながら、アンジェリークは本を閉じた。
            七夕───
            それは彦星と織姫が一年に一度出会うとされる日。
            今日は特別に丸1日自由とあって、ロザリアはばあやに自分の育成している星を見せに
            行くのだと言ってさっき出かけて行ってしまった。
            「私はどうしよう・・・」
            今日は聖殿で七夕祭りが催される。
            それに参加するのもいいけれど───
            トントン、とノックの音が聞こえた。
            「・・・はぁい」
            「アンジェリーク!」
            「はぁ〜い★」
            「マルセル様、オリヴィエ様!」
            「あのね、今日ね聖殿で七夕祭りがあるでしょ?
             一緒に行かない? って誘いに来たんだよ!」
            「ロザリアも誘いに来たんだけどさ・・・いないみたいだね♪」
            「あ・・ロザリアはばあやさんと一緒に出かけてしまったみたいなんですけど・・」
            「そっか、ならしょうがないね★」
            「ねぇ、一緒に行こうよ、アンジェ!」
            マルセルにあわせるように肩にとまっているチュピも可愛い声で鳴いた。
            「じゃあ・・・」
            こうしてアンジェリークとオリヴィエ、マルセルとチュピは仲良く聖殿へと出かけて行った。


            「わぁ♪」
            聖殿の入り口には大きな七夕飾りが飾られていた。
            「すごいですよね、オリヴィエ様、マルセル様・・ね、チュピ」
            「ん〜・・・確かにすごいね♪」
            「本当だ! 綺麗だね!」
            「ピピピ♪」
            聖殿の庭にはガーデンパーティ風に飲み物や食べ物が用意されている。
            「あ〜アンジェリーク、来て下さったのですね〜」
            「ルヴァ様!」
            「ゆっくりして行ってくださいね、アンジェリーク」
            「リュミエール様!」
            見れば守護聖達全員が集まっていた。
            「なぁ〜んだ、アンタ達も来てたんだ」
            「まぁな───
             よぉ、お嬢ちゃん! 俺に会いに来たのか?」
            「オスカー様ったら」
            ゼフェルもランディもジュリアスもクラヴィスも思い思いの場所でくつろいでいる。
            風が適度に吹いているのだが、やはり暑い。
            それでもその暑さを楽しむようにアンジェリークは静かに夜空を見上げていた。
            天の川を挟んでひときわ輝くアルタイルとベガ。
            今頃二人ともゆっくりと話をしているのだろうか。
            「───何を見ている」
            「あ・・・星を・・・」
            夜空を見上げているアンジェリークに話しかけてきたのはクラヴィスであった。
            「───そういえば一年に一度彦星と織姫が会える日だったな」
            「そうなんです、さっき読んだ本にもそう書いてあって・・・」
            「もし・・・
             もしお前が織姫だったらどうする?」
            「え?」
            「一年に一度しか会えない相手とその一日はどうやって相手と過ごす?」
            星を見上げながらのクラヴィスとの会話。
            クラヴィスの質問にアンジェリークはにっこりと笑って答えた。
            「かき氷をいっぱい食べます!」
            「──────」
            「私、かき氷が大好きなんです♪
             今日みたいな暑い日に会うんですもの、一緒にいっぱいかき氷を食べます!」
            「・・・・・・」
            まだまだ大人の恋愛には程遠いようである。
            そんなアンジェリークを可愛いと思いながらもクラヴィスは内心苦笑していた。
            「じゃあ・・・
             お前の恋愛の条件にはカキ氷がたくさん食べれることが含まれるのか?」
            「もちろんです♪」
            急に辺りが騒がしくなった。
            いつしか皆がクラヴィスとアンジェリークの会話を聞いていたらしい。
            そして───
            「俺、いっぱいかき氷を食べるよ、アンジェリーク!」
            「ランディ様!」
            ランディが嬉しそうにカキ氷のカップを持って食べている。
            「そうだね! 僕もカキ氷大好きなんだ!」
            「あ〜暑い日はかき氷がおいしいですよね〜」
            「ん、うまいなカキ氷は。
             さすが俺のお嬢ちゃんが好きな物だけあるな」
            「カキ氷ならそんなにカロリー無いしおいしいよね★」
            「本当に・・・こんな暑い日には特においしいですよね」
            「ケッ! 甘ぇもんは苦手だけどよ、これはさっぱりしててまずくねーな」
            「暑い日に冷たいものを食べ過ぎるのは良くないが、カキ氷なら大丈夫であろう」
            ───混じらなくてよかった・・・
            クラヴィスは思った。 
            アンジェリークの言葉を聞いた時、即座にカキ氷を持って来ようと一瞬思ったのだが、
            それより先に他の守護聖達がこぞって現れた。
            「つまりはみんなお前狙いということだな・・・・」
            「え? 何ですか? クラヴィス様?」
            「いや───」
            「皆さんカキ氷が好きなんですね♪ 嬉しいです♪」
            「・・そうだな」
            モーションをかけられているのもわからず、アンジェリークはにこにこ笑っている。
            それが引き金となった。
            いつしか七夕祭りとは関係なく、カキ氷大食い大会へと発展したのだ。
            『もし、自分が織姫なら彦星とカキ氷をいっぱい食べる』がいつしか
            『カキ氷を一番多く食べたの者がアンジェリークとらぶらぶ』に変化していた。
            無言で意地になってカップにてんこもりのカキ氷を食べ続ける同僚達。
            「皆さんすごいですね♪」
            そして当然のごとく訪れる悲劇
            きーん。
            きぃーん。
            きぃぃーん。
            「ぐっ!
            「わぁぁぁぁんっ!
            ランディとマルセルが地面に転がった。
            「・・・・・・」
            「どうしたんですか? ランディ様? マルセル様?」
            慌てて駆け寄るアンジェリークの前にルヴァとオスカー、オリヴィエ、リュミエールが転がった。
            皆頭を押さえている。
            「だらしねー奴らだぜ───
             それよりおっさん・・・結構やるな・・・」
            「皆、鍛錬がたらぬ。
             ・・・ゼフェルこそやるではないか」
            ゼフェルとジュリアスの意地の張り合いを楽しそうに眺めているクラヴィス。
            きぃぃぃん。
            きぃぃぃぃぃぃん。
            きぃぃぃぃぃぃぃぃん。
            それは突然訪れ、二人の脳天を確実にHITした。
            「ぐはぁっ!
            「あ゛
            「───ぷっ」
            カップを投げ出し、頭を抱える二人を見て、堪えきれずにクラヴィスが吹きだした。
            「てっ・・・てめー・・・ぐあわああああ!!!!
            「クラっっ・・・がふぅっ・・・」
            「ぶっ・・・・」
            楽しい
            実に楽しい。
            「ぶぶぶっ・・・」
            カキ氷をあんなに大量に短時間で食べればどうなるかぐらいはわかっていながらも、
            アンジェリークの関心をかおうとした皆の行動が面白かった。
            頭を押さえて苦しそうにしているジュリアスの前で一度立ち止まる。
            「ぷっ」
            「クっ・・・クラヴィスっっっ・・・・だあああああああっっ!!
            クラヴィスの嫌がらせに反論しようとするが、ジュリアスの頭の『きぃぃぃぃぃん』は治らない。
            「さて、ゆっくりとアンジェリークとカキ氷を食べるとするか───」
            「〜〜〜〜〜っっっ!!!」
            悔しそうな皆の視線を受け、クラヴィスはアンジェリークを誘いゆっくりとカキ氷を食べ始めた。
            「・・・・いい夜だな・・」
            「クラヴィス様───」
            暑い中、ゆっくりと可愛いアンジェリークと食べるカキ氷。
            「今頃きっと同じように彦星と織姫もカキ氷を食べているだろうな・・・」
            「そうですよね♪」
            二人が何やらいいムードになってきたその時。
            「お嬢ちゃん、カキ氷って本当にうまいもんだな!」
            「チュピも大好きって言ってるよ、アンジェ!」
            「あはははは!! 俺、いくらでも食べれるよ!」
            「あ〜・・・暑い日にはカキ氷が一番ですね〜」
            「アンジェリークはいちごが好きなのですね、私もですよ」
            「オメーもいちごばっかり食べてねーで、たまにはレモンも食えよ! ほらよ!」
            「そなたの好きなカキ氷をたくさん用意してある。
             心ゆくまでたべるがよい」
            見事に復活をとげた守護聖達がゾンビのようにアンジェリークに群がる。
            「・・・・フッ・・」
            わいわいと皆で食べるカキ氷も悪くはないが───
            またしてもおこるであろう惨劇を予想しながらも、クラヴィスは楽しそうにカキ氷を食べていた。




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