ザ・人気投票★
「輝け! 守護聖様人気投票結果発表〜!!!」
ドロドロドロドロ・・・とドラムの音がなって、派手なファンファーレが響く。
会場にはたくさんの女性達がつめかけ、上気した顔で壇上を眺めていた。
「さぁ、やってまいりました!
守護聖様の人気投票結果発表です!」
王立研究院の男性がマイクで挨拶を始め、拍手が沸き起こる。
「では、本日、プレゼンテーターを務めてくださる素敵なお嬢さんを紹介 いたしましょう!
・・・アンジェリークさんです!」
少し大きくなった拍手に迎えられ、やや緊張した面持ちでアンジェリークは頭を下げた。
「皆様からの清き一票が守護聖様の人気を決めるこの投票!
今回もたくさんの方が投票してくださいました!!
そして会場には皆様の憧れの守護聖様がいらしてくださっています!!」
一瞬ライトが消え、真っ暗になる壇上。
「まずは緑の守護聖マルセル様!」
男性の紹介に、マルセルの少し照れくさそうな姿にスポットライトがあたる。
「きゃ〜! マルセル様ぁ♪」
「マルセル様〜!!」
次いでランディ、ゼフェルという風に紹介されていく。
王立研究院主催のこの人気投票はパソコンを使って行われる。
一日に一人何票でも投票でき、好きな守護聖の名前をクリックして投票ボタンを押せば
投票終了という簡易システム。
期間を設けて集計し、その時点で1位だった守護聖が表彰されるということになっていた。
表彰されたからといって何が変わるわけでもないのだが、いつもよりは身近に守護聖を
感じることができると女性達の間で人気があった。
「───以上で守護聖様の紹介を終わらせていただきます」
ジュリアスが用意された席に着席し、会場が再び明るくなる。
「それでは、結果発表を行います!」
次々に順位を発表していく男性。
アンジェリークは結果発表がプリントされた紙に目を通していた。
自分は最後に3位。2位、1位の守護聖に用意されたプレゼントを渡すだけである。
そして、妙な事に気がついた。
順位の隣に守護聖の名前、その隣には総得票数が明記されているのだが───
2位オスカーの票数は1位であるジュリアスの票数を遥かに超えているのだ。
「・・・間違いなのかしら?」
再度紙を見直すが、どう見ても1位のところにはジュリアスの名前。
「???」
不思議がるアンジェリークをよそに、順位発表は順調に進んでいた。
───なんのことはない。
皆、承知の上なのだ。
プライドの高い、高すぎるジュリアスを2位に置くわけにはいかない。
いや、首座の守護聖として得票数に関係なく1位になっていなければならない。
皆の暗黙の了解、つまりは八百長である。
誤解なきように言っておくが、決してジュリアスに人気がないわけではない。
人気はちゃんとあるのだが『全宇宙の女性が恋人』と公言し、またその女性達を
メロメロにするオスカーには及ばないというわけである。
2位のオスカーが発表されようという時、アンジェリークが司会者に向かって、
素直に自分の疑問をぶつけた。
「あの・・・」
「あ、はい、なんでしょう?」
「この順位票なんですけど、1位のジュリアス様の票と───」
しまった───
誰もがそう思った。
アンジェリークをプレゼンテーターにしたまでは良かったのだが、誰もが
“誰かがちゃんと説明してるだろう”と思っていたのだった。
そして次の瞬間。
当の本人であるジュリアスと居眠りしているクラヴィスを除いて他の守護聖達が一斉に
アンジェリークに向かって走り出し、彼女を会場から連れ去った。
「な、何なのだ?!」
残されたジュリアスは司会の男性に詰め寄る。
「い、いえ・・・あのその・・・」
「何故アンジェリークが皆に連れ出されるのだ?」
「さあ・・・なんででしょう・・・」
「そなた! 何か隠しているな!」
「そんなこと・・・は・・・ないです」
「─────もう良い!」
いくら聞いても要領を得ない男性を睨みつけ、ジュリアスは会場を出ていった。
「ジュ、ジュリアス様?」
この時間は絶対に来ないはずのジュリアスが現れ、王立研究院はパニックになっていた。
ジュリアスの顔を見れば、何かがあったことが一目瞭然である。
「エルンスト、投票結果を見せるのだ!」
「い?!」
「何を驚く事がある! 早く見せるのだっっっ!」
「それは・・・しかし───」
「何故見せる事ができぬのだ! 早くせぬか!!!」
絶体絶命。
気がつけば、他の研究員達は知らない間に仕事をほっぽりだして逃げ出している。
「・・・・かしこまりました」
メガネを押さえ、パスハはパソコンの画面をジュリアスに見せた。
「──────!!!」
ジュリアス硬直。
私が2位だと?
首座の守護聖として、首位を奪回せねばならぬ!
「エルンストっっっ!!」
「うわ・・・は、はい」
「この人気投票は第2回目もあるのだなっっっ?!!」
「え・・・それは・・どう・・・でしょう・・・」
「あるのだなっっっっっっっ?!」
「あります! ありますです!!」
ジュリアスに押されてそう答えたものの・・・
面倒くさい、非常に面倒くさい。
普段の業務で忙しい上に、会場を設置し、プレゼントを用意するのも何もかも。
しかし、ここまで怒り心頭なジュリアスに言われて『やりません』とも言えない。
「よいか、今度の投票は明日から始めるのだ!!!!」
「え・・・あ・・・」
「よいなっっっっっっ!!」
「───わかり・・・ました」
「おい、ジュリアスのヤロー、何執務室にこもってんだ?」
「あ〜何でもパソコンに向かいっぱなしなんですよね〜
さっきも執務の事で部屋に入ったら、えらく怒られましてね〜・・・」
「きっと難しい執務をなさってるんだよ、ね? ランディ?」
「そうだとしたら、さすがジュリアス様だよね。
俺には出来ないよ、あははははは」
「案外、やらしーサイトでも見てんじゃナイの?」
守護聖達が集まって話をしている間、ジュリアスはパソコンに向かっていた。
「今日はこのぐらいでよいか・・・
さすがに287回もマウスをクリックすると指が疲れるものだな───」
オスカーとの票数は、ジュリアスの連続クリックによって縮まってはいるものの、まだまだ開きはある。
「・・・?」
画面を閉じようとしたその時、自分の票数が伸びているのに気がついた。
「なるほど・・・誰かがこの光の守護聖ジュリアスに投票しているのだな。
良い心がけだ、きっと心の清い持ち主の者に違いない。
───む?!
オスカーの票が伸びているではないかっっ!! くっ、負けられぬ!」
再びマウスをクリックし始めるジュリアス。
そして───
責任を感じてジュリアスに投票している女王候補の姿とオスカー。
「今日は30票ぐらいでいいかなぁ、あんまり入れすぎるとおかしいし───」
「ジュリアス様に何とか1位になってもらわないとな・・・」
それぞれが部屋で呟きながら、マウスをクリックしている。
そしてそして───
「フッ・・・いくらお前が頑張ったところで、オスカーには勝てぬ」
「頑張りましょうね、クラヴィス様」
クラヴィスの私邸では、クラヴィスとリュミエールが仲良くパソコンを並べてオスカーに投票している
姿があるのであった。
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